国際協力出前講座してきました〜!

アフリカ全体

中学校で、国際協力出前講座してきました(対象:中学1年生4クラス)

JICAを通して、茨城の中学校/高校から開発途上国でのボランティア体験談を語って下さいという依頼が、元隊員にたまにメールが来ます。基本は東京で仕事をしているのでそのメールはスルーしているのですが、たまたま地元に戻っていたのと、アフリカに絞った講演依頼だったので、興味を持ったのと自分が手を上げないと流れるだろうなという気もして依頼を受けることにしました。

せっかくなので出前講座の振り返りを。

準備

最初の募集案内は以下のようなものでした。

■テーマ
アフリカ州―国際的な支援からの自立に向けて―

■ねらい
「アフリカ州では,なぜ国際的な支援が必要とされているのでしょうか」という探究課題に対して,産業や環境問題などの視点から情報収集し,考察する。

■対象
中学1年生(4クラス)

■希望内容
・JICA海外協力隊(青年海外協力隊/シニア海外協力隊)の体験談
・外国の生活・文化/異文化理解
・国際協力活動
・質疑応答タイム
・生徒同士の話合いなどのちょっとしたワーク

私が活動していた国がボツワナであったこと、教育目標が「自ら社会に参画しようとする生徒の育成」(茨城県の教育目標?)とのことで下記の項目になり、最終的にワークショップを加えた上記スライドの構成になりました。

  • ボツワナの魅力
  • アフリカの(ボツワナの)直面する課題
  • 課題に対して,日本や国際社会が取り組んでいる支援
  • 実際に取り組んだ支援
  • 自然や世界の人々と共生していくために大切なことは何か

機材

・学校側で準備
プロジェクター
スクリーン(2つ)
スピーカー
マイク

・私の方で準備
Macbook及びスライド(keynote)
HDMI変換コネクタ(USB Type-C)
VGA変換コネクタ(USB Type-C)(※念の為用意)

当日のセッティングで、プロジェクターから2つのスクリーンになぜか表示できないことが発覚。念の為用意しておいたVGA変換コネクタも使用して接続することで、2つのスクリーンで表示が可能に。

ただ、1つのスクリーンが意図した表示だが、もう一つのスクリーンは発表者ノート付きで表示されてしまう。少し考えて、発表者ノートは使用せず2つのスクリーンを使用することにする。発表者ノートの内容はEvernoteにも転送していたので、そちらをスマホで参照することにした。

ボツワナミュージック

下記4曲のボツワナミュージック(B-POP)をかけるつもりだったので、スピーカーもチェック。説明を加えたかったが時間がなかったので省略し、最後の「Gosiame」も時間がなく断念(どれも好きだけど、任期後半にBarでかかり始めたA.T.IのKhiring Khorongがお気に入り)

Song titleMusician
OTENGDr Malinga Feat Muungu Africa
DiphiriDr Malinga
Khiring KhorongA.T.I
GosiameDj King Feat Rittar
ボツワナダンスミュージック Best 40

グループワーク①

アイスブレイクで、以下の質問をする。
エジプトは知っていますか? ⇒ ほとんど(全員?)が手を挙げる
ボツワナは知っていますか? ⇒ 誰も手を上げない
最初からわかりきった質問だが、アイスブレイクとか得意じゃないので。

アフリカについてどんなイメージを持っていますか?という問いに対して、以下の回答。

  • 野生動物が一杯
  • たくさんの民族がいる
  • なんだかんだ言って楽しく暮らしてそう
  • etc

忘れちゃいましたが他にも4つほど出てきて、自分がボツワナに赴任する前に抱いていたイメージとほぼ同じでした。上記で出たイメージは全て正しくて、一通りのことは知っているんだなーと思いました。

アジアを一括りに語れないように、アフリカも54カ国あり、文化や人種も多様で、自分は大きく4つに分けて考えていると話しました。

地域民族/言語
北アフリカアラブ民族でアラビア語。中東地域と同じ文化圏。下のサブサハラ以南のアフリカと分けて考えられることが多い
西アフリカ旧フランスの植民地でフランス語圏が多く、料理は美味しい。強靭なフィジカル(マッチョ)で、フットボールが強い国が多い
東アフリカケニアのマラソン選手のように、スリムで身体能力が高い。スワヒリ語を母語とする国が多い。
南アフリカいい例が浮かばなかったので、この後ボツワナを中心に話しますと濁す

ボツワナの紹介

アフリカ南部の内陸国でサバナ気候。国土は日本の1.5倍だが、人口は230万人と少ない。画像検索でゾウがたくさん出てきているように、ゾウの生息数は世界最大で、密猟者の取り締まりは厳しく行っている。ダイヤモンドの生産量は毎年世界1,2を争うほどで、アフリカの中で経済的に豊か。

国旗について

意味
水色水色は雨を表し、とても貴重。ツワナ語で雨を意味するPulaは、通貨単位になっているほど
黒と白人種の融合を意味していて、単なるスローガンではなく(民族的なものもあるが)対立より話し合いでの解決を実践している

上記スライドには(PDF化したので)ページの1枚目の画像しか表示されていませんが、実際は複数枚の画像があり、Dijo(ご飯)の画像は美味しそうとの感想で、また野生動物の写真はやはりインパクトがあったようです!家やモールの写真については、私が赴任時に抱いたように、日本とあまり変わらないといった印象を受けたようでした。

Dijoの反応が予想に反していたので、白い肉まんのようなPapa(国によって呼び方が違う)は味がしなくて苦手な人も多く、女性は環境にすぐ適用するけど、男性は食が合わずやせ細る人もいますと説明を補足。

ボツワナの課題

ギリシャでは給与所得者の25%が公務員で、多すぎる公務員により経済が破綻したと言われている(日本の公務員は10%程度)。ボツワナは公営企業の勤務者を入れると50%なので、ダイヤモンドが枯渇するとこのままでは国が成り立たないので、早急に別な産業が必要で、ダイヤモンドマネーにより発展してきた光の面もあれば、それに頼りすぎた負の面もあると伝える。計算が苦手問題(アフリカ全体で見られる問題)もあり、自動車整備の隊員は、算数から教えることを余儀なくされたことも紹介。

この計算が苦手問題で、ちょっと生徒の勝ち誇った表情を確認。これ能力的な問題ではなくて、言語の問題も重なっていると思います。ツワナ語で授業受けていたのが、小学校4年生くらいから全てが英語に切り替わります。英語で、算数の授業を受けるのです。日本人は母国語である日本語で算数を習うことができます。大学を含めた高等教育も日本語で習うことができます。これはとても恵まれているんですよね。やっぱり母国語でないと、語彙力や理解力が少し欠けてしまう。講座を終えてから、「英語で分数の計算を理解できる自信がありますか?」という質問をして、能力的な問題ではないんだよということを伝えておきたかった。。

現地で活動した内容

テクニカルカレッジ(専門学校)内のネットワークの安定稼働/改善がミッションで、赴任時には既にインターネットが繋がらなくなっていたので復旧し、その後も安定稼働や改善に尽力した旨を説明。

「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」といった格言があり、釣り方(構内ネットワークのトラブルシューティング)を教えたかったがボツワナ人は日本人ほど真面目ではないので、インターネットを含む構内ネットワーク問題を解決してくれればそれでよく自分達でそのトラブルシューティングについて学んで実践するということにはならず、予想通り、自分が帰国してから1年後にはインターネットがまた繋がらなくなったという話しをしました。

グループワーク③は、「今後ボツワナにどのような支援が必要だと思いますか?」というお題。他のアフリカ諸国と違い「貧困/教育/医療/インフラ」には問題がないので、雇用/産業に絞られた形で考えてもらう。今までの新興国(日本⇒中国⇒東南アジア)は製造業を中心に発展してきたが、アフリカはそれが現時点で当て嵌まらない。安くて質のいい労働力を背景に今までの新興国は発展してきたが、アフリカは安い労働力はあるが、読み書き計算等の質を求めるととたんに、高くて質のいい労働力になり、採算が合わないので発展していないという現状を説明し、また人口が230万人しかいないので内需も期待できない旨説明。

色々な意見はあったが、生徒自身もこれだと言った結論には至って無かったようで、講義が終わった後に生徒が聞きに来た。「ボツワナではどのような産業を今育てているのですか?」と。自分達のようなエンジニアを招いてIT産業の育成に力を入れてみたり色々模索しているが、現時点でこれといったものは見つかっていないと伝える。(ボツワナでも答えが見つかっていない)なかなか難しいお題を出してしまった。

アフリカの直面する課題

この辺りから時間が無くなり、捲くり捲くる!

下記三本の映画を題材に話す。内戦は手が出せない(手を出すということは、片方を手助けすることに繋がり、政治的な思惑が働くことに繋がる)。

ブラッド・ダイヤモンドは、資源(ダイヤモンド)が資源紛争武器購入という負の方向に働いた面を描いた映画。ボツワナはダイヤモンドが良い方向に働いた珍しい例で、アフリカの多くの国は資源が負の方向に働く(汚職を含めて)

下記2つはルワンダの民族紛争を描いた映画。ホテル・ルワンダは、ホテルに匿われたツチ族が助かるというまだ救われる映画だが、ルワンダの涙はただただ悲惨という映画で、まだ観れていない。


内戦中は支援のしようがないが、そうでなければ、多くのアフリカ諸国が「雇用・貧困・教育・医療・インフラ」に課題を抱えているが、支援は可能。

支援について

日本は、無償・有償資金協力、技術協力、ABEイニシアティブやアフリカ開発会議(TICAD)を主導したりしている。スライドの左側の写真は、元アフリカ隊員と、現役のABEイニシアティブ生交流会を主催したときの様子。

ABEイニシアティブコミュニティ「KAKEHASHI AFRICA」とは

国際社会が取り組んでいる支援は時間が無くてほとんど説明できなかった。一例として、モザンビークの農家の収入が少ない問題があり、農作物をダイレクトに市場に届けることで農家の収益アップに貢献するアプリをWFP(国際連合世界食糧計画)と一緒に開発していると話したかったのだが。

今アフリカはラストフロンティアとも呼ばれていて、若い人口を背景に経済発展が見込まれている。支援慣れを問題視していたり、「アフリカに助けの手を差し伸べる」といった開発援助の姿勢をやめるべきだと主張する人達もいる。支援する・されるという関係から、経済的なパートナーとしての関係への移行期にあるのでは?と話したかったが時間切れ。

「『アフリカを救う』をやめて」仏大統領に強固な姿勢、アフリカの若手活動家たち - NewSphere - Page 2
10月8日、フランスのモンペリエにて、新アフリカ・フランス首脳会議(Nouveau Sommet Afrique France)が開催された。本会議は首脳会議・サミット(sommet)との名前がついているが、アフリカ側の首脳は一人も招待されず、アフリカの若者たちにスポットが当てられた。会議プログラムのハイライトである全...

自然や世界の人々と共生していくために大切なことは何か

牛や山羊や鶏は勝手に育つ。日本と違って四六時中世話をする必要がない。のんびりとした環境で先祖代々生活してきたのに、いきなり8時間テキパキと働くのは難しいことを、帰国してから気付く。文化を理解するとは、時間を掛けて生活を共にすることで得られるもの(理解はできるが、IT産業を主要産業に育てるのであれば、あくせく働くしかないが)

先輩隊員のfarewell partyで音楽をガンガンかけていたら、欧米人が車で猛スピードでやってきて音楽がうるさいと言ってきた(自分達も来た当初はBarでガンガン音楽かけていて近所迷惑ではないのか?と思っていたがいつの間にか適応していた)。今日は「farewell partyなんだ、音楽をガンガンかけるのはボツワナの文化じゃないか!何を文句行っているんだ?」と応じ、一緒にいたボツワナ人も「そうだそうだ!我々の文化だ!」と言っていた気がする。これがまさに文化を理解し体現することで、現地の人と共生することに大切なことですと伝えたかったが時間切れ。欧米人の個や自分の権利を主張する文化と協調性を重んじる日本の文化の違いもあるが、2年間現地に溶け込んで現地の人と同じ生活レベルで生活するJICAボランティアだからこそ体現できることだと思うし、いいプログラムだと思う。

SDGsにも無理やり触れる。

4.質の高い教育をみんなに
学内のNW環境を安定稼働させることで、間接的に上記目標に関わっていた。

12.つくる責任つかう責任
ボツワナと北のザンビアを結ぶカズングラ橋JICA有償資金協力で今年(2021年5月)完成した。先進国との貿易が主で、アフリカ大陸内での貿易が少ないので、こういったアフリカ大陸内での貿易を助長する取り組みは、エネルギー効率的に(持続可能という観点でも)、とても良い取り組みだと思うと紹介。

質疑応答に移るも、既に時間が過ぎてしまっている。一応質問が無いか問いかけるが、このケツカッチン状態で質問できるツワモノはおらず、今日の講座は終了となる。

出前講座を終えて

おそらく時間が足りなくなるなーと思っていたが、やはりそうなった。項目を減らす必要があったが先方の要望なので減らせないし、事務的に話しを進めれば時間内に収まるけど、現地での体験を臨場感を持って話すことが要請を受ける一番の理由だと思うし。

グループワーク:4分×3回=12分
発表:3分×3回=9分

まあグループワーク発表の時間をきちんと取れたのはよかったと思うし、必要なこと(自分の中で伝えたかったこと)は話せたし、悪くはなかったかなと。アフリカ(ボツワナ)に対する印象は、多くの生徒でとてもよくなったようでした。アフリカの中で比較的豊かなボツワナなので、他のアフリカもそうではないということも伝える必要もあったが、そこは先生方にお願いしようと思う。

発表について明確に決めたなかったのが、やっぱり大きかったかな。発表のファシリテーションしてもらえるとフィードバックが貰えて嬉しいけど、学校の先生にお任せしますというスタンスにしていて、講座直前まで明確にしていなかった。その場で臨機応変に対応するつもりだったが、グループワークを除いた約30分の構成を、発表時間も除いた約20分にするのだからよく考えたら無理な話しだ。そしてkeynote発表者ノートを使うつもりだったが、プロジェクターとスクリーンの問題で使えなくなってスマホのEvernoteを都度見るという形になり話しがワンアクション遅れるし、発表者ノートで時間を逐次確認するつもりだったがそれもできなくなり、タイムスケジュールが組みづらくなったのもひとつの要因。今思うと、発表者ノートを優先して、スクリーンを1つにすべきだった。

これで一旦国際協力モードは終わりにして、ビジネス視点でアフリカを見て行動していきます!

追伸

「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」問題は当時の調整員とも意見が割れていて、私は後者のスタンス(≒魚を与えつつ釣り方も教える)だったが、「JICAがどこにそんなことを明記していますか?」と謎の切り返しをされ、(ただ魚を与えて下さい)的なスタンスを求められて困惑しながら活動していました(後任が引き継ぎ10年単位で魚を与えていると、どこかで「釣り方を教えてくれ」という人が現れるので、それを待ちましょうというスタンス)

2年程度で爪痕を残そうなんて甘いという考えはわかるのだが、「後任は来るの?」「インターネットは誰が復旧するの?」といういわゆる援助慣れに繋がってしまう問題や、ユーチューブを見て過ごすのんびりボツワナ人ITオフィサーと安い労働力として派遣されてきた働き者の日本人ITオフィサーという、「ボランティア」ではなく「安い派遣労働者だったのか?」という実態に対して、少し疑問を感じるのは当然だと思う。

JICAへの報告書に「コメント/要望」欄があったので、「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」問題についてスタンスを尋ねたところ、下記の回答を頂きました。

最後にご質問頂きました「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」という格言に対してですが、JICAとしては、「魚を与える」のではなく「釣り方を教える」とJICA職員が事業紹介しているのを今年度入ってからも何回か聞いたことがあります。ボランティアに対しても同様のスタンスが言えると思います。(専門家やJICA職員のような要求はされませんが)

以下JICAボランティアの目的が3つ掲げてありますのでご参考下さい。
(1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与
(2)異文化社会における相互理解の深化と共生
(3)ボランティア経験の社会還元
https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/index.html

やっぱりそうですよねー。数年越しにモヤモヤが晴れました!

ついでにもう一言。一回やれば充分と思っていたけど、アフリカに行ってリモートで出前講座やイベントに参加するのはありかも!

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